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「人生、七味とうがらし」

 ある占い師

 うらみ、つらみ、ねたみ、そねみ、いやみ、ひがみ、やっかみ。
 
 人を翻弄するこれらの性は、いずれも自他の比較に由来する。
 


他者と比べる中でしか自己を見ることのできない人の治らない病であり業であるが、これと正面から向き合うことで人生の味わいもいっそう深まる。と占い師は言います。

 昨年、俳優の樹木希林さんがお亡くなりになりました。全身に移転したがんを受け入れ、それに振り回されない。最後まで仕事を続けられた姿は印象的でした。

 この人こそ、

「私は、私。あなたは、あなた」

を貫いて生きた人なのでしょうか。


 新聞にこんなエピソードが載っていました。

 小学6年生の水泳大会で選んだ種目はクロールや平泳ぎでなく「歩き競争」でした。泳げない子向けの競技で、ほかは、1、2年生ばかり。あっという間にゴールして一等賞をとったそうです。同級生から軽蔑されながらも賞品をもらい、得した気分になったということです。「これでわたしは、きっと味をしめたんだね。いいんだ、これでって。そのまま来ちゃったわね、わたしの人生」

 一方、有名なマンガ家の手塚治虫さんは、その嫉妬ぶりで知られている人です。

 手塚治虫さんと言えば、「鉄腕アトム」でしょうか。私は、「りぼんの騎士」が大好きでした。私の小さいころは、マンガの貸し本屋さんがあってよく借りに行ったことを覚えています。
大きくなってからは「火の鳥」が好きでした。権力の腐敗や、差別、平和の貴さ、生と死などを題材にした作品の数々。どの作品からも学ぶことがたくさんありました。そんなすごいマンガ家が嫉妬深かったなんて。

 彼は、ベテランになってからも、人気マンガが出るごとに「ああ、また若手に追い抜かれたか」という思いに駆られたそうです。猛烈に悲観し、頭を抱えて転げまわったそうです。アシスタントたちを片っ端からつかまえてこう聞いたそうです。「どうだ、おれの絵、このごろどう思う?古くないか?マンネリか?見飽きたか?はっきりいってくれ、おれの絵はもうおしまいなのか?」

また、「原稿料は絶対に上げないで下さい。仕事が来なくなります」とマネージャーに言ったそうです。高さが理由になり、発表の場が減ってしまう恐怖からでしょうか。

 この強い焦りは「マンガの神さま」というイメージからほど遠いですね。


 子どもはいつ頃から自分というものを意識するようになるのでしょうか。

 生まれたばかりの赤ちゃんは、自分という意識などなく自分と世界とは全く一緒です。自分と世界が違うことに気づくのは、2,3歳ごろに芽生える低次の自我でしょうか。それまでは何でもお母さんに委ねていたのですが、言うことをきかない「イヤ、イヤ」時代が始まります。この時代の子育てはとても大変です。
自分の思い通りにならないとひっくり返って手足をばたばたさせて泣き叫ぶこともあります。まったくの自己中心的な行動です。自分は世界で一番えらいんだと思っている時期ですね。

 成長するにつれて、自分と周りの違いが見えてくるようになります。この頃から、他人を意識するようになるのでしょう。すなわち自分と友だちを比較する意識が生まれてきます。自分と他者の違いを自覚することは、自分を正しく知る上でとても大切なものです。

 ところが、その違いを自分が気づいていくのではなく、お母さんやお父さんあるいは先生から言われたらどうでしょうか。

 特に、その違いも優劣で知らされたらどうでしょうか。あなたはあの子よりも優れている。あなたはあの子よりも劣っている、と。
今の学校教育で行われているテストも優劣で知らせるものになっているように思います。これは、子どもに抱かなくてもいい必要以上の劣等感や優越感を持たせることになってしまいます。

 「愛の要件」としてシュタイナーは
このように記しておられます。

 シュタイナーは地球紀の使命は「愛の育成」だといいます。
愛の育成には要件があるというのです。

 「或る存在が他の存在を愛するようになるために必要なものは、その存在がまったき自己意識を持ち、独立していることが必要です。
私の手は私の身体を愛しません。独立し、他の存在から切り離されたものだけが、他の存在を愛することができるのです。そのためにこそ、人間は自我存在にならなければなりません。愛の担い手は、自立的な自我でなければなりません」と。
だからシュタイナーの教育の最終目的は自立した自我を確立することにあったのですね。

 樹木希林さんは「私は私、あなたはあなた」と堂々と割り切って、わが道を歩んだわけではないと思うのです。女優にとって美しくないということはどれほど劣等感を抱かせたことかと思います。他の美しい女優さんを見てきっと嫉妬したに違いありません。でもあの人のすごいなあと思うところは、美しくないところをエネルギーにして女優として歩んでいくことを選んだことにあると思うのです。歳をとってしわが出来たことを、「せっかくできたしわを伸ばすなんて、なんてもったいない」と言っていました。

 様々な負の感情とも向き合って受け入れてきたからこそ女優として味わいのある演技ができたのでしょう。

 手塚治虫さんは、強い焦りや嫉妬をエネルギーにして、あの膨大な作品を生む原動力を生み出していたのだと思います。

 二人ともの共通点は、自立した人であったことです。だからこそ、希林さんの映画やドラマでも、手塚治虫さんのマンガでもほとんどが愛にあふれた作品だからです。

 子どもを育てるときには、他の子と比べて優劣を感じさせるようなことは決して言わないこと。「あなたは、あなたでいいんだよ」というメッセージをいつも意識して送ることが大切です。それには、まず大人がそのようなあり方でなければなりません。

 子どもを育てるって難しい!

 うらみ、つらみ、ねたみ、そねみ、いやみ、ひがみ、やっかみ。

 人を翻弄するこれらの7つの性は、治ることのない病であり業です。
けれども、これと正面から向き合うことで人生の味わいもいっそう深まるのだと占い師は言います。

 正面から向き合うこともまた難しいですね。自分がこんな負の感情を抱いていることすら気づかないで人を傷つけることが多いからです。

 人生は七味とうがらし。

 とうがらしのはいった人生は、良しも悪しも、またぴりりと一味ちがう人生になるのでしょう。

by kusunokien | 2019-01-10 11:13 | くすのき園つうしんより