新年に思うこと その二 「強くないと生きていけない?」

世間は競争。 強くないと生き残れない?

このような考え方はいつのころから言われるようになったのでしょう。
ダーウィンの進化論が浸透してきた結果でしょうか。
人間を含めすべての生物は、その環境によりよく適用することで生き残り、生物がそうすることで環境もまた進化していくという、いわゆる弱肉強食の考え方です。




この考え方は、動物はともかく人間には絶対あてはまらないと思うのです。
 
昨年の暮れ、孫たちのクリスマスプレゼントを買いに古い友人と出かけました。
私たちの青春時代、ビートルズに始まって、アメリカのフォークソングが大流行しました。
そんな中、自分たちのフォークソングを目指した人たちがいました。
笠木透という人もその中の一人です。
七十歳を過ぎても元気に活動しているそうで、彼女はファンを今だにやっていて、ごり押しで彼のCDを買わされてしまいました。
その中の一つ。心に残る歌がありました。
「あざみの花」という歌です。

 弱くたって 
 いいじゃないの
 人を傷つけるために
 生まれてきたのでは
 ありません

 人は一人 みんなちがう
 わたしは わたしらしく
 生きていくのです

 みんなのために
 ひとりが殺される
 そんな国に咲く花よ
 怒りの涙は 土に落ちて
 天をにらんで 咲く花よ
 あざみの花よ 咲き誇れ

  (繰り返し)
 
 ゆっくりだって
 いいじゃないの
 人と争うために
 生まれてきたのでは
 ありません

 人は一人 みんなちがう
 わたしは わたしのままで
 歩んでいくのです

  (繰り返し)

 小さくたって 
 いいじゃないの
 大きくなるためだけに
 生まれてきたのでは
 ありません

 人は一人 みんなちがう
 わたしは 誰かと一緒に
 生きていくのです

  (繰り返し)

     作詞 笠木透


私には、小学3年生の孫娘がいます。
その子は生後8ヶ月のとき交通事故に遭い、意識不明の重体になりました。幸い意識は戻ったのですが、事故の影響で成長ホルモンの分泌が悪く、未だに毎日ホルモン注射をしています。
その子は何をするのもゆっくりで、小さいのです。
彼女に捧げたい歌ですね。
 
もう一つ、冬休みに太宰治のアンソロジー「泣ける太宰」「笑える太宰」という本を読みました。
太宰治というと数度の自殺未遂、最後には入水心中をして命を絶った負の印象が強い作家です。
その太宰治が若者の間でひそかに人気を呼んでいるのだそうです。
今まで、まんがしか読まなかった者が太宰の本を夢中で読んでいるとか。
どんな人が読んでいるかというと、受験に失敗し、就活にも失敗し、いわゆる「負け組」の若者であると。
そんな若者を勇気付けるものが太宰にはあるのでしょうか。

この本の案内人である宝泉薫氏は、太宰研究家の奥野健男氏の言葉を借りて太宰のことを、このように述べておられます。

「人間の持っている弱さを失わないとしたからこそ、弱いけれど温かき、若き人々の見方であり続ける。」と。

 名文選の中にあった太宰の言葉です。

「文化と書いて、それに、文化(はにかみ)というルビをふること、大賛成。
私は「優」という字を考えます。(略)人を憂える、人の寂しさ、辛さに敏感なこと、これが優しさであり、又、人間として一番優れていることじゃないかしら、そうして、そんな、やさしい人の表情は、いつでも「はにかみであります。」


こんな考え方どう思われますか。
歴史はきっと強者が作っていくのだろうけれど、文化を創っていくのは、弱いけれど、人の寂しさ、辛さに敏感な優しい人なのだと思います。
その人たちは、勝ち誇った顔ではなく、いつも恥ずかしそうにしているのです。
 
人間の精神は、競争に打ち勝つことを通して進化するのではなく、挫折や辛さや、悲しみを体験することを通して高く前進していくことができるのだと思います。
そして、そのような体験をしたからこそ、人の思いにも敏感になれるのですね。

私は、前の職場で挫折を味わい、最愛の夫とも死別しました。
そんな体験が以前と比べて少しは、人の気持ちや子どもたちの気持ちにも思いをはせることができるようになったように思います。

新しい年が、どの人にとっても希望を見出せる年になることを願っています。


樋口早知子

by kusunokien | 2012-01-17 20:58 | くすのき園つうしんより

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