これからの子どもたちのために、よりよい社会を作っていくのが大人の役割です。今、直面している大きな課題とは何でしょうか。
核戦争を含む世界的な戦争。
地球温暖化による環境破壊。
誰もがわかっている大きな課題ですが、私たちのような小さな力のない存在がいったい何ができるのかと自問してしまいます。
核の問題や、温暖化の問題よりももっと深刻な問題が進行しつつありますよ。と警鐘を鳴らしている人がいます。歴史学者のユブァル・ノア・ハラリ氏が新聞のフォーラムにこんな記事を乗せていました。
「AIが支配する社会」と題して、国民は常に監視下。膨大な情報を持つ独裁政府が現れる。
AIと監視技術の進歩で歴史上存在したことのない全体主義的な政府の誕生につながるでしょう。AIとバイオテクノロジー、生体認証などの融合により独裁政府が国民すべてを常に追跡できるようになる。二十世紀のスターリンやヒットラーなどの全体主義体制よりもずっとひどい独裁政府が誕生する恐れがあるというのです。
彼は、一部のエリート、あるいは独裁的な政府による支配から逃れるにはどうすればいいかと問うています。誰がデーターを所有し、どんなAIを開発しているのかが問題です。少数の企業や政府がすべてのデーターを所有するようになったら手遅れです。逆らおうとする者は簡単にスキャンダルを見つけ出され、おとしめられます。と
今、日本でも消費税の引き上げに伴い、キャッシュレス化が急速に広がっています。便利さと何パーセント還元とかの甘い誘惑に皆、踊らされているように思えてなりません。キャッシュレス化は、何を買ったのか、どこへ行ったのか、どんな本を買ったのかなどの個人の情報がすべてデーターとして残ります。
政府はうまいこと考えたものだと思います。消費税引き上げの反対も抑えられ、国民一人ひとりを丸裸にすることができるのですから。
新聞にこんな記事も載っていました。アメリカでは口座の無い貧困層は排除されていると。
IT企業が多いサンフランシスコは現金を取り扱わない小売店が増えていて、銀行口座を持っていない人たちは、現金が使えないことで食事もままならない状況になりつつあるというのです。そして最後にキャッシュレスの戦国時代を生きる決済業者は、新たな「支配者」への道を先に見すえていると。
多くの人が気づかない間に、得体の知れない社会が世界中で広がっていることに不気味さを感じます。
個人が抹殺され、人々は一部の独裁者や機械に支配されるSFの世界のような時代が迫ってきているのでしょうか。
お店には店員さんが一人もいない。自動車を運転する人も誰もいない。働く場所も機械にのっとられる。そんな世の中がすぐそこに押し寄せてきています。
こんな世の中で子どもたちが生きていかなければならないとしたら、私たち大人は子どもたちに何ができるのでしょうか。
ハラリ氏は、データーを使われ操作されないためには己を知り抵抗する必要があるといいます。今は急を要します。 あなたを監視し、解読しようとする企業や政府があるからです。彼らがあなた自身よりもあなたを知るようになったら、あなたを操作するのは簡単ですと。抵抗するにはまず、あなた自身の弱さを認識する必要があるといいます。
自分自身を知り、自分の弱さを認識するには「自我」が育っていなければなりません。
100年前に生きたシュタイナーも教育の最終目的は「自我」を育てることにあると解きました。
シュタイナー自身、今のような世の中が到来すると認識できていたのでしょうか。
古来ソクラテスも「己」を知ることの大切さを人々に説きました。
「自我」は人間一人ひとりの中にあり、どの人にも、人間だけに備わっている神さまからの贈りものです。
わたし
さかのまこと
わたしのなかの
こころのおくに
大きなわたしが
すんでいる
わたしがひとに
いじわるなとき
大きなわたしは
かなしそう
わたしがひとに
しんせつなとき
大きなわたしは
うれしそう
わたしをじっと
みまもっている
大きなわたし
ほんとのわたし
この詩はシュタイナー学校の2年生の授業で唱えられている詩です。
子どもは三歳ごろになると自分のことを「ぼく」「わたし」というようになります。「自我」の芽生えです。でもこのときの自我は自己中心的。「ぼくが」「わたしが」と自分の主張ばかり。
ここから、一生かけて本当の自分を探す旅が始まります。
でも、子どもたちが成人するまでに「自我」が育っていなければ自分を知る道も閉ざされてしまいます。
シュタイナーは自我が育つためには、人生そのものである意志と感情と思考がバランスよく育つ必要があると説きました。また、それぞれが育つ時期があり
意志は0歳~七歳
感情は七歳~十四歳
思考は十四歳~二一歳
だといいます。決して順番を間違えたらダメだとも。
今の教育の問題点は、思考にばかり重点がおかれ、意志も感情も育てなければならないという視点がほとんど見られません。しかも思考は知識ばかりを詰め込む傾向があり、自分の考えを持つような教育にはなっていないように思います。
もうすぐ、七歳を迎えようとしているくすのき園の子どもたちです。「意志」がしっかり育っているのでしょうか。おもちゃの取り合いでけんかもするけれど、譲ってあげたり、我慢することもできるようになっています。リズムのある生活を送っていることで、大人の指示がなくても行動できるようになっています。何よりも自分のしたい遊びを見つけて友だちと一緒に遊べていることです。意志が育ってきているなあと実感しています。
思考は、何が真実なのか見極める力になり、
感情は、美しいものを大切にする力になり、
意志は、善なる行為へと導く力となりますように。
シュタイナーが教育に託した思いです。その遺志を受け継ぐには、私たち大人も「私」を知り自分自身を高めていく必要があります。
ハラリ氏は、瞑想や、芸術に触れる、山登り、ハイキングなど人それぞれに、自分を理解する機会を持つことを勧めておられました。子どもたちと一緒に楽しみながら大人も共に育つことができればいいですね。
すみよしシュタイナー幼児・学童教室『くすのき』は、シュタイナー保育・教育の場です。親子教室や親子体験会も行っています。
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